フィットネスジムへ入会して2ヶ月が過ぎた。
その月の初め、男はジムで再々度の測定を頼む事にした。
入会当時、1ヶ月目、そして今回の2ヶ月目。
こうして1ヶ月毎に測定していけば、体重や筋肉、脂肪量の変化が良くわかるだろう。
「これから毎月月初に測定するようにしよう」男はそう考えていた。
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実は今回の測定は楽しみだった。
食生活の変更、そしてエアロビクスへの参加。
なんとなくだが、既にその効果が男自身にも感じられていたからだ。
高まる期待と共に測定器に乗る男。そしてその結果は……
男の予想通り、体重は大きく減っていた。
その量、マイナス3.5kg。
マイナス0.5kgだった先月の実に7倍の減少量である。
男は喜んだ。「努力の結果が実った!」そう思った。
しかし、測定表の詳細を見るうち、男の表情は次第に曇っていった。
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測定表には体重と共に、現在の脂肪量とそれ以外(除脂肪量)の重量が載っている。
この除脂肪量とは、骨格や筋肉等、体の維持に必要不可欠な部分の事だ。
一般的に「ダイエット」「痩せる」「体重を減らす」というのは「脂肪を減らす」を意味する。
内臓脂肪や皮下脂肪を減らすことでメタボリックシンドロームを防止し、お腹を凹ませ、スリムで健康的な体型になることが目的だからだ。
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今回、男の体重は確かに減った。
しかしその内容は、主として脂肪以外の部分だったのだ。
減った3.5kgのうち脂肪分は1.5kg。残り2.0kgは減らせたくはない筋肉等の減少だったのである。
風呂の鏡で、男は改めて己の体をチェックしてみた。
確かに体重が落ちた結果は現れていた。以前より「細い」体になっているのは間違いない。
しかしよく見ると、細くなったのは肝心の腹ではなく、腕や胸のような気がするではないか。
主として上半身の肉が落ち、腹や下半身はさほど変らず。
筋肉が落ちてしまったのが原因か、肉に締まりがなく、なんとなくだらんとしたイメージ。
瓢箪というか瓜というか、もしくは「ラ・フランス」という洋梨に似ているような気がしないでもない。
男は愕然とした。
体重が落ちたのは素直に嬉しい。だが、この体型は受け入れ難い。
体重が少なかろうがなんだろうが、だらしのないひ弱な体はお断りだ。
筋肉ムキムキになるつもりはないが、身長と体重に見合った筋肉が欲しい。
「このままではいかん!」
男は再度、食生活とトレーニング方法を見直す事にしたのだった。
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