4ヶ月が経過し、5ヶ月目も半ばになった。
いつの間にか夏は過ぎ、秋も次第に深まりつつあった。
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体重はじりじりと減っていた。
今では以前のように月に3kgも落ちることはなかった。
せいぜい1.5か2.0kg。それでも男はまったく慌てる事がなかった。
確実に減っているという事実があり、毎月減る体重の大部分が脂肪分であることにも満足していた。
そして何より、ジムへ通う事が楽しかったからだ。
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エアロビクスは相変わらず面白かった。
同じ「初心者向けクラス」であっても、曜日や時間帯、インストラクターによりその内容は様々だった。
基本に忠実なクラス、動きの激しいクラス、あるいはよりダンスの要素が強いクラス。
それぞれに個性があり、面白かった。
同じ動作でも、やり方によって運動量が格段に異なる事にも男は気づき始めていた。
単に指定された動きを行うだけではなく、指先や足先まできちんと伸ばす・曲げるを意識した正しいフォームで行うと、途端に体に感じる負荷があがった。
そしてその「正しい動き」は、インストラクターの動きを間近で一生懸命見なければ判らない。
いつしか男は、スタジオで前の方に陣取る事が多くなっていた。
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エアロビの他に、ボクササイズのレッスンにも参加するようになった。
これは音楽に合せながら、ボクシングのトレーニング、いわゆる「シャドーボクシング」様の動きをするレッスンだ。
エアロビのようにステップで苦労する事はなかったが、運動量は更に大きかった。
エアロビ効果で持続力にそこそこの自信が付きつつある男だったが、最初のボクササイズのレッスンの後には足がふらふらになり、滝のように汗をかいた。
またまたびっしょりになったウエアとタオルに驚きながら「これはストレス発散になるわ……」と男は関心した。
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筋力トレーニングにも慣れてきた。
筋トレマシンは、表示されている「ここに効きます」という部位、本当に「その部分だけ」しか鍛えないのだという事も判ってきた。
形や動きが似ていても、鍛える・疲れる場所がまったく異なるマシンがあったからだ。
中途半端な姿勢で行うと、表示されている部位以外が変に痛くなった。
「マシンは正しいフォームで行わないと意味が無い」という事が実感としてわかりつつあった。
負荷も次第に増えていった。
「10レップで目一杯になるよう」設定する負荷。
腹筋マシンで40kgが精一杯だったオモリは、50になり60になり、いつの間にか70kgを超えていた。
大胸筋用のマシンも、大腿筋用のマシンも、負荷は当初の約2倍になった。
何気に行った腕立て伏せが、軽々50回できた事に男は驚いた。
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ジムでの知り合いも増えた。
ジムに通う人は、やはり同じような曜日・時間帯に来る事が多い。
必然的に顔見知りは増え、挨拶する相手が多くなった。
もちろん、初心者の男より長く続けている人の方が多かったが、男より後に入会したのに既にやめてしまった人も数多くいた。
「自分なりの目標を持っていないと長く続かないのは何事も同じなんだな」
今日も常連さんと挨拶しながら、男はそう考えていた。
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見た目の体型には更に変化が現れた。
まず、あれだけしぶとかった腹がようやく凹み始めた。
先の「輪切りにすると三角形」が一回り小さな楕円に変り、また小さな三角形になった。
鏡で横から見ると、胸より腹が凹んでいるのがはっきりとわかった。
脂肪の下に筋肉が感じられるようになった。
ヘソ下の脂肪はまだまだたっぷりとあり、指でつまみとれたが、その下の筋肉までの距離は確実に短くなっていた。
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ウエストのサイズが一気に減ったのもこの頃だった。
これまで履いていた36インチのボトムスはブカブカになり、昔履いていた32~31インチが余裕で履けるようになった。
当然、仕事用のスーツは買い替えを余儀なくされたが、男は嬉々として新しいスーツを買った。
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不思議な事に、ウエストは減ったが太股は太いままだった。
31インチのジーンズは、ウエストは入るが太股が入らなかった。
顔つきはさほど変らなかったので、会社で気づく人は少なかった。
だが、久しぶりに訪れるような仕事先では「痩せましたか?」と聞かれる事が多く、男は密かに喜んだ。
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