その18~終章|ダイエット物語・半年で減量した男

青空

こうして、半年間に渡る男のダイエットは終了した。

体重も体脂肪も大きく減り、外見も痩せた。
結果的に大成功といって間違いないだろう。

ここに至るまで、不思議な事に「リバウンド」という言葉は男の頭に浮かばなかった。

  • 「食事が我慢できず、ドカ食いしてしまう」
    「運動が長続きしない」

世間にはそんな事例が溢れているのに、何故か男は順調に体重を減らすことができた。それは何故だろうか。

「食」の面でいえば、自由にとれる食事を設定していたのが良かったのではないだろうか。

「好きなものを食べたい」「沢山食べたい」という欲求は非常に強いものだ。
これを完全に我慢するのは非常に難しいし、ストレスも溜まる。

どこかでガス抜きしなければ長く続かないに違いない。

 

男は昼食だけは終始外食、そして制限を緩くしていた。

カロリーを考慮するとはいえ、外食では脂質・糖質が多くなるのは避けられない。
ならばと、できるだけ好きなものを選ぶようにしていた。

「朝夕は我慢するが、昼には好きなものを食べられる」

これは食生活の改善を長続きさせる上で非常に有効な要素だったはずだ。

 

そして一週間の中では、週末の食事制限を同様に緩くした。

緩くしたというより、「”一週間のトータルではどうか?”を考えるようにした」だろうか。

1日2,000kcalを目安に平日の食事を摂り、それを下回った分を週末に増分した。
もちろん平日に食べ過ぎが続いた場合は、週末に我慢することでつじつまを合わせた。

週末は出かける機会も多かったし、一週間我慢した自分へのご褒美の意味もあった。
そして「何か起こっても週末で調整できる」は気楽でもあったのだ。

 

自宅で飲む酒量は激減したが、誘われて外で飲む時は酒をセーブしなかった。

先に書いたとおり、男は酒に固執はしていなかったが好きだった。
そして、大勢で飲む酒がストレス解消に役立ってくれた事は間違いが無かった。

運動に関しては「楽しかった」というのが継続できた一番の要因だろう。

ジムで体を動かす事がまったく辛くはなかった。
むしろ頻繁にジムへ通えるよう、仕事を早く終わらせるようにしていた程である。

エアロビクスやボクササイズについてはこれまで書いてきた通り。

筋トレは確かに辛い面があったが、多少なりとも筋肉が付いてくると張り合いが出るようになった。
それでも男にとって、胸板や腕が厚く・太くなっていくのは嬉しかった。

尤も他人が見て判るほどの量ではない。鏡でじっくりと見て、うっすらと「筋」が見えるかどうか程度の話である。

世間には「筋トレするとマッチョになるから……」を理由に運動を躊躇する女性がいるという。

「ダイエット目的程度の筋トレでは、見て判るような筋肉は付かない」

これは男が身を持って知った事実だった。

週に数回のジム通い。筋力トレーニングと有酸素運動。

「自宅近くを一人で黙々と走るだけだったら、これらと同じ運動量を続けられただろうか?」

男は時折自問してみるのであった。

そもそものきっかけだった健康診断。

次回の健康診断はまだ先だったが、もはや男は心配してはいなかった。

体重の心配はない。

脂肪量(体脂肪率)も正常の範囲のはず。

肝機能は、万が一まだ異常があるようなら完全に禁酒してしまえばいい。

ここ半年の経験に比べれば、禁酒などごくたやすい事のように男には感じられた。

体重・体脂肪率において当初の目標はほぼ達成した男だったが、今のところこの生活をやめるつもりはなかった。

食生活での

  • 「1日3回きちんと食事」
    「腹八分目」
    「間食をしない」
    「栄養バランスよく」
    「夜は軽く」

……は、ダイエットはもとより、今後の(より歳を重ねた後の)健康な生活のためにも必要だと考えたからだ。

もちろん運動も同様だった。

これから先どれくらいジムに通えるかはわからないし、仕事がより忙しくなれば行く回数は減るに違いない。

だが、とりあえず続けてみようと男は思っていた。

 

師走の空は見事な冬晴れ。

珍しく休日の日中に訪れたジムの駐車場。男は晴天の空から降り注ぐ陽の光に目を細めながら自家用車の横に立っていた。

手には本屋で買ったばかりのトレーニング雑誌、その表紙にはこんな一文が見えた。

『ダイエットとは一過性ではなく、生活習慣そのものを変えること』

「そうだよなぁ……」

ポリポリと頬を搔きながら頭上を見上げる男、その顔は快晴の空と同様に晴れやかだった。

<了>

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