その4~フィットネスジムの2|ダイエット物語・半年で減量した男

トレーニングシューズ

説明のレッスンが終わり、解散となった。

一人になった男は、まずは準備運動から行ってみる。

フロアの片隅には準備運動用のエリアがあり、マットが常設されていた。

座って見回すと、壁に準備運動の形と時間が表示された表が掲げられている。

見よう見まねでストレッチをしてみる。
首を伸ばして10秒、腕を伸ばして15秒…

時計で時間を測りながら行うと、感覚的な秒数と実際の秒数が大きく違うことに気がついた。

20秒30秒というのがとてつもなく長い時間なのだ。
普段なら意識しない時間だけに、これは新鮮な感覚だった。

ゆっくりやっても10分ほどの準備運動だが、終わると男はうっすらと汗をかいていた。

これだけ入念に体を伸ばしたのは何年ぶりだろうか。
気持ちが良いような、既に疲れてしまったような不思議な気分である。

準備運動には、上記のような各部をゆっくり伸ばす「静的ストレッチ」の他に、積極的に体を動かす「動的ストレッチ」があり現在はこちらが主流です。動的ストレッチのイメージとしてはラジオ体操を思い浮かべてください。

トレーニングエリアへと移動する。

トレーニングマシンは、とりあえず簡単そうな自転車様のものを使ってみる事にした。

これは「エアロバイク」と呼ばれるらしい。

種類は2つ。普通のポジション(但しやや前傾でロードタイプ寄り)で乗るタイプと、背もたれがついて後ろに寄りかかれるタイプ(リカルベント)だ。

空いているリカルベントに乗ってポジションを合わせる。
シートはペダルが一番遠い時に膝が伸びきらない高さに……というのは普通の自転車と同様だろう。

負荷を適当に調整。正面のTVを点けてチャンネルを選ぶ。

ペダルを漕ぐ。ディスプレイに表示される回転数は70rpm(1分間に70回転)前後。
これは先の講習の際に教えてもらったのだが、60rpm以上でないと効果が薄いらしい。

えっほえっほと漕ぎ続ける。

5分も続けていると体が熱くなってきた。

いい感じに息が苦しくなってきたのが10分ほどの時。

「自転車ってこんなに大変だったっけ?」

男は目の前のTVを見る余裕がなくなっている自分に気づきつつあった。

懸命に20分漕ぎ続けた。

太股とふくらはぎが痛い。顔も背中も汗でびっしょりだ。顔を拭くタオルが汗で重い。

男は驚いた。こんなに沢山の汗をかいたのはいったい何時以来だろうか。

はぁはぁと息を吐きながら時計を見上げる男。時刻は既にかなり遅い。

今日は開始時間が遅かったのでここで引き上げねばならない。というか、肉体的にもこれで精一杯な気がする。

男はペダルを止め、エアロバイクを降りた。

ディスプレイにはここまでの消費カロリーとして100kcal前後の数値が示されていたが、これが多いのか少ないのか男には見当も付かなかった。

「これくらいの運動でいいんだろうか?」首を捻りながら、男はフロアをあとにした。

更衣室で汗にまみれたウエアを脱ぎ、風呂へと向かう。

大きな風呂はやはり良かった。
十数個のシャワールームに洗い場が同じくらい。湯船は大きくたっぷりとしていて寛げる。

先のスタッフが「お風呂だけ入りに来る会員さんもいますよ」と言っていたが、成程、これならそれも納得できる。

ゆっくりと風呂に浸かり、着替え、駐車場へと向かう。

このジムは月会費だけ払っておけば他は全部無料で使用することができる。
つまり、頻繁に来れば来るほど得だというわけだ。

男は思う。

さて、ここにはどのくらいの頻度で来られるだろうか?
そして、本当に効果はあがるのだろうか?

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