1ヶ月が経過した。
この間、仕事は比較的安定しており、男は週に2、3回ジムへ通い続けることができた。
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運動のメニューは初日同様トレーニングマシンがメインだった。
多少は慣れてきたせいか、エアロバイクを30分漕いでも初回のように息があがる事は少なくなっていた。
エアロバイクの他にも、例のベルトの上で走るもの(トレッドミルと言うらしい)も試してみた。
こちらはジョギングだけに足腰への負担が大きく、30分走り続けることはまだできなかった。
足をセットしたペダルが上下するもの(クロストレーナーと言うらしい)も試してみた。
こちらは機械とリズムが合わないと足が外れそうになり、なかなかに難しかった。
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ジム入会から丁度1ヶ月目の日、運動の効果をみるべく、男はもう一度測定を頼む事にした。
前回同様の身体測定。
前回同様の結果表出力。
どれどれと測定結果を眺める男、だが……「え!これしか変っていないのか?!」
男は驚いた。
確かに、体重は減少していた。
しかしその量はたったの0.5kgだったのだ。
男は頭を抱えた。0.5kgでは誤差のようなものである。1ヶ月もかけてこれでは苦労した意味がない。
「何故だ!きちんと運動しているのに!」
思い当たるところが無いわけではなかった。それは食事だった。
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男がジムへ来るのは仕事を終えてから。汗をかいた後外へ出ると当然のように深夜である。
それから夕食となると、開いているのはファミリーレストランかラーメン屋、牛丼屋くらいしかない。
運動で腹が減っていることもあり、牛丼屋へ入る事が多かった男。
確かに、深夜に食べる牛丼はダイエットに良いとは思えなかった。
「食事か……」
最初から「ダイエットには運動と食事の両方が必要」と判っていたのに、これまで食べる方には無頓着だった男。
次の課題はこれかと男は考えた。
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早速調べてみた。まずは食事の量だ。
男の頭の中にも「カロリー」という言葉くらいはあった。
しかしその認識は、「高カロリー=太る」程度のものだった。
具体的にどのくらいのカロリーを摂ればいいのだろう?どのくらいに抑えれば痩せるのだろう?
ネットを探し、「基礎代謝量」という言葉を見つけることができた。
これは単純に言うと「何もせずじっとしていても消費するカロリー量」
これだけ1日に摂っていれば餓死しない。という量らしく、身長や体重、体脂肪率等から計算できるとのこと。
そういえばこの「基礎代謝量」という文字は、先のジムでの測定結果にも書いてあったはずだ。
貰った測定表を見直すと確かに基礎代謝量があり、男の場合、その数値は1600kcalだった。
「じっとしていても消費するカロリー」が1600kcal
これを0.6~0.7で割ったもの(≒1.5を掛けたもの)が、普通の生活で1日に消費するであろうカロリー、「生活代謝量」となる。
1600/0.6≒2600kcal
つまり男の場合、1日の消費カロリーを2600kcal以下に抑えれば少しずつ痩せるはず、という理屈になるのだった。
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