「一体、これまでどのくらいのカロリーを摂っていたのだろう?」男は考えた。
朝はコンビニでパンと缶コーヒー。
昼は基本的に外食。ファミリーレストランや定食屋、ラーメン屋と様々。
夜は自宅でと外食が半分ずつ。それに今はなるべく控えるようにしているが酒とつまみ。間食は基本的にしない。
サラリーマンとしてはごく普通の食生活だろうと男は思った。
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調べると、インターネットには基本的な料理のカロリーが載っているサイトが数多くあった。
ファミリーレストランのメニュー表にはカロリーが載っており、そのWEBサイトには栄養素を含めた更に詳しい説明があった。
よく見ると、コンビニやスーパーで買う食品にもカロリーが明記されているものが多かった。
これまで無頓着だったカロリーだが、巷には情報が溢れていることに男は気づかされた。
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どれと男は計算を始めた。
朝の缶コーヒーはブラックなのでほぼノンカロリー。パンは種類によるが300~500kcal。
昼によく使うファミリーレストランは、ランチのライス込みで一人前1000~1500kcal。
夜に牛丼を食べたとすると700kcal、これに卵やら味噌汁が付く。
酒とツマミは千差万別。
ざっくりとだが、今の摂取カロリーは先の「生活代謝量≒2600kcal」とイコールくらいの気がする。
だとすれば体重がさほど減らなかったのも無理はない。
これから意識して摂取カロリーを減らせば、運動の効果もより大きく現れるのではないだろうか。
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食生活の改善には、カロリー量だけではなく栄養素の問題もあるらしかった。
3大栄養素と呼ばれる炭水化物(糖分)、脂質、タンパク質、それに加えてビタミン類の関連だ。
男にも、太る=糖分(炭水化物)というくらいの知識はあった。
だが、それ以外は皆目判らない。
「3食きちんとバランスよく食べる」というのはよく聞くが、具体的にどうすれば良いのだろう?
心配することはなかった。カロリー計算同様、ネットには情報が溢れていたのだ。
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パンやご飯は炭水化物。
「太る要因」と言われる事が多いが重要な栄養素、そして脳を活性化させるのに必要だ。
パンに付けるバターやサラダのドレッシングはもちろん脂質。
脂質も炭水化物同様ダイエットでは毛嫌いされているが、摂らなくて良いわけではない。必要な量を摂らないと体にいろいろ弊害が出る。
但し、どちらも必要ではあるが食べすぎ厳禁。現代の食生活では摂りすぎになりやすいのだ。
肉は基本的にタンパク質。
これはダイエット的にも多く摂ることが推奨されている。だが脂質と一緒になっている場合(素材)が多いので、これまた食べすぎは要注意。
反面、不足になりやすいのは野菜やビタミン。こちらは積極的に摂る必要がありそうだ。
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トータルカロリーや栄養素以外に問題になるのは、朝昼晩3食のバランスだった。
朝や昼は多少多めでもあまり問題は無い。日中の生活で体や頭を動かすためにエネルギーが必要だからだ。
摂りすぎ注意の炭水化物もエネルギーとして使われやすい。
問題はやはり夕食だ。
朝や昼と異なり、あとは寝るだけの夕食。
ここでカロリーを摂りすぎると体脂肪が増えやすい。それに「体は寝ている間に作られる」とのこと。特に遅い時間であるほど拙いらしい。
今の生活の主体である「深夜にたっぷりと食事、すぐ就寝」は、ダイエット的には最もいけないことらしかった。
そして飲酒。
酒自体のカロリーより、同時に摂るツマミのカロリーが心配だ。これまた控える必要があるだろう。
幸いな事に、もともと男は酒に対する執着がなかった。
酒自体は大好きだし、飲み会で騒ぐのも好きだが、「飲まなければいられない」という事はない。
これまでの晩酌にしても、ストレス発散が主目的みたいなものだ。
「痩せる」という目的と「運動」というストレス発散方法があれば、飲まなくてもさほど辛い事はないに違いない。
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男は考えた。
まだまだわからない事は多い。だがすぐにできることもありそうだ。
- ともかくまず、全体的に食べる量(カロリー)を減らすこと。
栄養素はよくわからないが、なるべく「バランスよく食べる」こと。
積極的に野菜を摂ること。
夜の食べすぎはとにかくまずい。夕食は軽く、かつ早めにすること。
酒量を減らすこと。
夕食さえ注意すれば、昼のメニューは比較的自由にできそうだった。
仕事があり、また付き合いもある昼食。
「昼飯に節制しなくて済むのはありがたいな」
男はうんと頷いた。
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