さて、筋トレと休息の意味が判ると、トレーニングはとてもやりやすくなった。
- 「この前は上半身を鍛えたから今日は下半身」
「明日からしばらく来られないから今日は目一杯鍛えておこう」
「今日は疲れが残っている気がするからエアロビだけにしておくか」
スケジュールを組み、運動量をコントロールできるようになったからだ。
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定期的に筋トレを行うようになった頃、男はプロテインを試し始めた。
プロテインと聞くと「筋肉をつけるための薬」のようなイメージがあるが、実は単なるタンパク質の粉だ。
原料は牛乳や大豆。
前者は「ホエイプロテイン・カゼインプロテイン」後者は「ソイプロテイン」と呼ばれる。
各々特徴はあるが、ざっくり言うと前者は筋肉増量に都合がよく、後者は減量時に使いやすい。
「食事でタンパク質を摂っていればそれで充分なのでは?」
これまで男はそう思っていた。
そう、本来はそれで充分。男のレベルの筋トレでは栄養的な意味でのプロテインは必要がない。
だが、もう一つ意味があった。それは摂取するタイミングだった。
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筋肉を効率よく付ける為には、筋トレ直後にタンパク質を補給する必要があるとされている。
具体的には30分以内。
もちろんこれは自宅まで戻れる(戻って食事がとれる)時間ではない。かといってジム内で夕食を摂るわけにはいかないだろう。
この点プロテインなら簡単だ。シェーカーと呼ばれるカップの中に粉のプロテインを入れておけば、あとは水を混ぜるだけで飲めるようになるからだ。
しかも、プロテインは純粋である分、カロリーが低い。
ジムで飲んだとしても、その後の夕食から減らすカロリーは少なくて済むのだった。
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更にもう一つ。
「なんとなくだけど、プロテイン飲んでると筋肉痛が引くのが早い気がするんだよな」
筋トレ後にやってくる筋肉痛。年齢のせいか言われるより長く筋肉痛が残る傾向のある男だったが、特に下半身の筋肉痛がより長く残った。
普通で2日、頑張ると4日も痛むことがあり、スケジュールが崩れる原因にもなっていた。
これがプロテインを飲むようになってから短くなったような気がしないでもない。
「気のせいかな?でもいずれにせよ、ジムでプロテインを飲んでおくと自宅へ戻った時の腹の減りが少ないのも間違いないわけだし」
筋トレ後にシャカシャカとシェーカーを振るのが男の日課となっていった。
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