その6~その後|レーシック・視力回復物語

その後

一週間が経過した。

この間、男は先の注意点はきちんと守っていた。
「何しろ万が一にも眼がおかしくなったら大変だからな!」
男は実直でもあり、また小心者でもあった。

予約日。カルテを持ち、自宅近くの眼科医に「術後検診」へと向かう男。

ここでの診断は東京の病院での翌日検診と同様のもの。
これまた経過良好との事で男はほっとした。

さて、この「地元の別の病院で受ける一週間後検診」だけは自分で診察料を負担しなければならない。
※手術を受けた病院で受診するなら無料(手術料に含まれる)
尤も、こちらは手術とは異なり健康保険が効く。支払は2,000円強といったところだった。

診察後、病院で処方してもらった目薬を買いに薬局へと向かう。

処方箋を渡して待っている間、調剤師さんから「レーシックの手術ってどんな感じでした?」と熱心に聞かれた。
「ええ、それはもうね……」と得意気に話しながら、この手術に興味を持っている人はやっぱり多いのだなと男は思った。

さて、その後。

手術から1か月が経過した男だったが、生活上の不満は何もなかった。

「一週間の注意点」は既に解消済だったが、気を付けていることはあった。

  • 眼には衝撃を与えない。
    眼にはできるだけ水を入れない。
    何か感じたらすぐ点眼。

これらを意識していたが、かといって苦労というほどではなかった。

2.0になった視力は素晴らしかった。
日中はまったく問題なし、実に綺麗に良く見えた。特に遠景は感動ものだった。

反面、近くを見るのは少々苦手だった。
鏡に顔を近づけて自分を見るような時にはちょっと見難い。
パソコンの画面も今までより離して使うようになった。先の老眼鏡云々の話も頷ける。

夕方、黄昏時もちょい見にくかった。
また夜、車のメーターパネルのように「真っ暗な中に光るもの」があると、その周囲に少しだけにじみが感じられた。

ともあれ、欠点はあら捜し程度のものだった。
医者によれば最終的に視力が落ち着くのは数ヶ月先との事。その頃にはまた状況も変わっていることだろう。

男は今の状況に至極満足していた。

そういえば、手術費用の点では発見があった。それは生命保険だ。

この手術は先のとおり健康保険の対象ではなく全額自費なのだが、生命保険の「疾病特約」とか「手術特約」とかの対象になっている場合が多い。(保険会社や契約内容により異なる)
男の場合も対象となり、申請したら数万円が戻ってきた。

「さて」
男は考えた。

この手術、場所が場所だけに受けるまでは確かに怖い。
だが、実際処置した後は、眼鏡・コンタクトとは比較にならない便利さになる。

どんなところでも裸眼でOKというのは実に嬉しいもの。
そして何より、「自分自身の眼が良くなった」という感動は大きい。

いずれ老眼が来るだろうし、もしかするとまた近眼・乱視の類があらわれるかもしれない。
だが……

「とにかく今、こんなに綺麗に見えるようになっただけでも手術したかいはあったよな」
男はそう考えていた。

<了>

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